新潟大学大学院 自然科学研究科

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専攻・研究

若手研究者

Q1. 現在の研究内容を教えて下さい。
Q2. 学生へのメッセージをお願いします。

石塚 淳材料生産システム専攻
機能材料科学コース
助教 博士(理学)
石塚 淳

A1. 超伝導体は、エネルギー損失ゼロの送電線、核磁気共鳴画像法、量子コンピューターなどに応用できる次世代の材料物質として注目されています。超伝導の基本的なメカニズムはBCS理論(1957年)によって解明され、様々な実験をうまく説明することができました。しかし、BCS理論では説明できない問題も数多く残されています。例えば、スピン三重項超伝導体やトポロジカル超伝導体です。私はこういった特別な超伝導がなぜ起こるのか、どのような性質を持つのかを理論的に解明し、新たな物性を提案するための研究を行っています。 研究の手法としては、量子力学や統計力学の知識をベースとして、多体問題を扱うための場の理論の方法、結晶の対称性の情報を抽出するための群論、トポロジカルな性質を調べるための位相幾何学、物質の電子状態を詳細にシミュレーションするための第一原理計算などを使います。“More is different”というP. W. Andersonの有名な言葉にあるように、多数の電子が協調して創り出す現象は、個々の電子の運動とは全く異なるものです。未知の量子相を開拓するワクワク感を大切にしながら研究に取り組んでいます。

A2. たいていの場合、才能だけでは研究はできません。深く思考し、毎日研究を続けることで道が拓けます。そのような経験は、社会に出て、どのような仕事に就いたとしても役に立つはずです。ぜひ楽しんで研究をされてください。

大井 志穂数理物質科学専攻
数理科学コース
助教 博士(理学)
大井 志穂

A1. バナッハ環上の保存問題に興味を持って取り組んでいます。保存問題とは、ある特定の構造や集合、関係等を保存するバナッハ環上の写像を特徴づける問題です。ある構造や集合、関係などを保存する写像は、ほかにはどのようなものを保存するのでしょうか。一見無関係のように思える構造が、潜在的に強い関連をもつことがこれまでの研究で明らかになってきています。スペクトルはバナッハ環論における重要な概念であり、私は特にバナッハ環上の等距離写像(距離を保存する写像)について研究をしています。単位的可換C*環上の任意の全射複素線形等距離写像が、荷重合成作用素であることを主張するBanach-Stoneの定理(1932年)に代表されるように、代数構造と距離構造の間には深くて驚くべき、かつ潜在的な関連があります。距離構造が代数構造を決定するバナッハ環はどのようなものなのか、その本質の解明を目指して取り組んでいます。

A2. 大学院ではこれまで学んできたものをさらに発展させ,じっくりと自らの研究に取り組むことができます。価値観が広がるような貴重な経験をすることができると思います。

城内 紗千子電気情報工学専攻
電気電子工学コース
准教授 博士(工学)
城内 紗千子

A1. 有機薄膜太陽電池(OPV)は、IoTセンサー、ビニールハウス、ウェアラブル電源などに利用できる次世代太陽電池として注目されています。研究室では、実用化に向けて、より簡易な作製方法と長寿命化に向けたモジュール構造の検討を行っています。これらの検討において、発電効率の向上は最重要課題となります。ドナーとアクセプター材料の組み合わせや焼成温度の違いによって発電効率の特性が大きく変化します。また、加速試験を実施することにより、性能評価だけでなく、性能低下の原因も特定します。使用環境を考慮した加速試験を行うことで、実用化への促進を図ります。今後は、特定の外部エネルギーを得ることによって共有結合の組み換えが起こるようなポリマーを取り入れた構造にも着手する予定です。

A2. 新しいことを学ぶための努力と面白い研究をしたいという知的好奇心が、自分にしかできない発想へ導いてくれると思います。研究に使える十分な時間と自由な発想を生かして充実した大学院生活を送ってください。

柴田 嶺環境科学専攻
フィールド科学コース
助教 博士(生命科学)
柴田 嶺

A1. 生態系や生物多様性は私たちの暮らしを豊かにする様々な恵みを生み出しており、このような恵みは生態系サービスと呼ばれます。登山やキャンプ、紅葉狩りなどを通じて自然を「楽しむ」、エコツーリズムや林間学校を通じて自然を「学ぶ」といった生態系サービスは、その価値を正しく評価(例えば経済価値へ換算)することが難しいという課題があります。正しく評価されなかった生態系は開発や管理放棄されることで、生態系サービスの劣化が進み、私たちの暮らしにも悪影響をもたらす可能性があります。そこで、私はSNSに投稿された大量の写真やテキストなどのビッグデータを分析することで、人々がいつ・どこで・どのような生態系サービスを享受しているのかを解き明かし、生態系サービスの価値を正しく評価するための研究を進めています。

A2. 自分が大学院生だったころを振り返ると、興味のある研究に没頭することができた非常に有意義な時間だったと思います。様々な技術を身に付け、工夫し、失敗し、悩みながら研究を進める経験は社会に出てどのようなことを行う上でも糧になるはずです。

齊藤 健二材料生産システム専攻
機能材料科学コース
准教授 博士(工学)
齊藤 健二

A1. 無機固体は、僅かなきっかけでもガラリと性質が変化する興味深い物質です。我々の研究グループでは、新しい機能を持つ無機固体(セラミックス)を創製する研究を行なっています。本物質を得るためには、用途に合わせた適切な元素の組み合わせに加え、結晶性固体の成長機構、結晶の質(結晶性)や形、サイズ等、様々なパラメータを制御することが肝要です。無機および固体化学に関する知見だけでなく、これまでに蓄積してきた技術を一層深化させて目的とする無機固体を作り、光や熱触媒を中心とした性能を評価しています。最近では、既存物質の結晶構造をマニピュレーションすることで、多機能性を示す新物質を作る研究にも着手しています。

A2. その人でなければできなかったと言われるようなオリジナルな研究を目指し、日々努力して充実した大学院生活を送って欲しいと思います。

湊 菜未生命・食料科学専攻
生物資源科学コース
助教 博士(農学)
湊 菜未

A1. 現在世界では7億人以上が貧困に苦しんでおり、アジアはアフリカよりも多くの飢餓人口を抱えています。私はこの食料問題の解決に貢献すべく、農作物生産量の約三割とも言われる病害虫によるフードロスの解消に着目し、植物病理学の分野で研究を行っています。植物に病気を引き起こすウイルスや細菌には生活環を宿主植物に依存しているために防除が難しいものも多く、新たな防除法の確立が期待されています。私たちの研究室では病原体と宿主植物の両方から様々なアプローチで農作物が病気になる分子メカニズムを研究しています。

A2. 大学院では皆さんがこれまで学んだことを更に突き詰め、高度な専門性を身につけることができます。また知識や技術に加えて、物事を論理的に捉え言葉にする力を育てることができます。費用や就職への不安で進学に踏み切れない方は、ぜひ教員に一度相談して情報を得ることをおすすめします。

石崎 智美環境科学専攻
自然システム科学コース
助教 博士(環境科学)
石崎 智美

A1. 自然環境下で、植物は周囲の環境ストレスや他の生物からの干渉を受けながらも、それらにうまく適応し繁栄しています。私の研究では、野外での調査、室内での計測・遺伝解析などを組み合わせ、それぞれの植物の生育環境や生活史(生長・繁殖スケジュールなどの植物の生き方)の解明に取り組んでいます。また、植食性昆虫といった他の生物の干渉がある条件下で植物が生長や繁殖を維持するしくみにも興味を持っています。植物の被食防衛戦略はとても多様で、植物の状態や周囲の環境要因によっても変化します。さまざまな環境に生育する植物の被食防衛戦略を明らかにし、被食防衛戦略と生活史との関係や、植物と動物の共存機構を明らかにする研究を行っています。野外でさまざまなストレスにさらされながらも生き延びている植物を見るたびに、そのたくましさに感嘆しながら研究を行っています。

A2. 大学院では、たった一年ではなく複数年をかけて1つの研究テーマとじっくり向き合い取り組むことができます。その中で、さまざまな失敗や挫折も経験するかもしれませんが、同時に、実験がうまくいったり、新たな発見があるかもしれません。どれもみなさんの成長の糧となると思います。