進学イベントやアンケートでいただく質問に、現役の博士学生である特任助手たちが回答しました。
博士進学に興味がある方、周りに博士学生がいない方、何から調べればいいかわからない方に特におすすめです。ぜひご活用ください!

更新日:2026年7月22日

進学の不安について

Q . 先輩方が進学を決めた理由は何ですか?
A . 特任助手3名の進学理由はこちらです:
牧野先生高校時代から、修士号を取得して民間企業の研究者になりたいと思っていました。学部4年のときに初めて参加した学会で、多様な研究テーマの発表を聞き、『私も自分の研究の面白さや価値をほかの研究者に認めてもらえる力を得たい』『サイエンスの面白さを、一生感じ続けられる人でありたい』と思い、博士進学を意識し始めました。研究分野が比較的新しかったこともあり、博士号の取得により情報の取捨選択能力が得られ、企業でも活躍できる、信頼してもらえる人材になれると考え、修士1年の夏に進学を決めました。」
藤野先生「博士課程を初めて意識したのは、修士2年の春でした。研究が楽しくなってきたことに加え、学部時代に取り組んだ実験が論文化できたことが重なり、『もっと研究を続けたい』という気持ちが強くなったことがきっかけです。その後は、指導教員や家族と何度も相談を重ね、自分の将来についてじっくり考えました。そして、最終的に博士課程への進学を決めたのは修士2年の5月末で、比較的遅い時期だったと思います。しかし、十分に考え、納得した上で進学を決断したため、その後は迷うことなく研究に取り組むことができました。」
高木先生「学部・修士課程を通して研究を進める中で、『なぜこのような結果になるのか』を考えながら実験を行い、新しい知見を得られることに大きなやりがいを感じました。もっと研究を深め、自分で課題を設定して挑戦したいと思い、博士後期課程への進学を決めました。進学前は経済面に不安もありましたが、現在は特任助手として給与をいただきながら研究を続けられており、安心して博士課程に取り組むことができています。」
いかがでしょうか。博士学生の友人と話していても、進学理由や決めた時期は様々だと感じます。

Q . 博士課程に進学するうえで、自分がその資質を備えているのか、向いているのかわかりません
A . 進学アンケートで毎年挙がる不安です。ですが、博士学生の資質が何か、向き不向きをどう見分けるかは、一概に言葉で表すのは難しいものです。博士学生である特任助手も、「今でも自分が博士学生に向いているかわからない」「最終的に博士号が取得できたら、やっと証明されるのかも」なんて話しています。
ここで、自然科学研究科の教授8名の回答を共有します:

「成果を出すための様々な武器を深く、広く展開できること。教員はそれぞれの学生をみて、武器を伸ばしたり、補強したりと指導する」
「指導教員とうまく連携し、自信をもって自活的に研究を行えること」
「能力は後からついてくるので、好きなことをずっと突き詰められることが大切」
「誰かから与えられることを待たずに、自分で開拓し、得ていく貪欲さ」
「勝ち残っていくための貪欲さ。若いうちは自分に自信をもつこと」
「失敗してもどこかで楽しめる感覚をもつこと。自分のオリジナルな研究成果を出したいと思うこと」
「リスクを背負えること。困難な状況でも、楽しんで突き詰められること」
「ものごとを不思議だと思える感覚。誰かに言われたことをただやり続けるのではなく」

どうでしょうか。似ている意見もありますが、バリエーション豊かですね。
とはいえ、能力や資質を客観的に評価するのは難しいので、納得感が低い人もいるかと思います。私は現実問題として、「学部~修士課程までの研究結果をもとに、博士課程で国際誌に投稿できる成果が出そうか?(=修了要件を満たせそうか?)」ということはよく考え、指導教員にも相談しました。さらに、研究テーマを複数進行させることで、どれかは論文にできる成果につながるようにしたりもしました。

Q . まわりに博士学生がおらず、同期も卒業してしまいます
A . 私もそうだったので、ほかの分野の博士学生と友達になりました。理学、工学、農学、果ては文系の博士学生 (や博士進学をめざす学生) と知り合いになり、支援金制度の情報交換をしたり、研究進捗を話し合ったり、苦労を共有したりしています。自分と同じく、研究に熱量をもって取り組む友人の存在はとても励みになるので、ありがたいと感じます。
本学には「院生会」という大学院生による自治組織があり、大学生・院生の交流や学びを促進するイベントや研究交流会の運営などを行っています。多くのイベントは予約不要で参加できるので、研究の息抜きに参加してみてはいかがでしょうか?また、研究分野ごとに「若い研究者の会」という大学院生や若手研究者が集まる、地域的・全国的な会もあります。

Q . 社会人になってから博士課程に進学することはできますか?
A . 可能です。本学にも、民間企業で就労しながら博士学生として学位取得をめざす「社会人博士」の学生や、企業を退職して博士学生として入学した学生がいます。
社会人博士については、こちらのHPもご確認ください。企業によっては入学金や授業料を払ってくれる場合もありますが、企業ごとに条件が異なりますので、
上司や担当部署によくご相談ください。また、すべての企業・部署が希望する学生に社会人博士制度を認めるとは限りませんし、企業での研究内容は機密保持や学術的価値から論文化するうえでアカデミア (大学での研究) とは違った障壁が生じる可能性があります。現在修士学生で、このまま博士学生に進学するか、企業に就職してから博士号の取得をめざすか悩んでいる方は、学位を活かしてどのような現場で何を成し遂げたいか、よく考えて指導教員や就職予定の企業に相談することをお勧めします。企業での研究は、あくまで会社の経営戦略や市場ニーズに基づいて、製品・技術開発、事業化、利益創出につなげることが大切ですので、アカデミアの研究とは大きく異なります。
なお、研究職志望の修士学生が大手民間企業の人事に「いずれ社会人博士の制度を利用したいが、可能か」という質問をする場面に何度か遭遇しました。回答は一貫して「制度は存在するが、希望があっても利用できるかは業務内容や会社の事業方針に大きく左右される。希望者に比べて実際に利用した人数は非常に少ない。また、就労しながらの研究で成果を上げることは容易でない」という内容でした。
以下、本学教員からの社会人博士制度についてのコメントを掲載します。こちらの先生は、修士課程卒業後に民間企業の研究職に就き、約1年で博士課程に入学していらっしゃいます:

「民間企業に就職した場合、学費を個人が支出するか、企業が支出するかを問わず、博士課程入学が認められるとは限りません。配属された部署の業務内容はもちろんのこと、企業のみならず直属の上司の個人的な考えにも大きく依存します。企業での業務内容を博士論文に含めた方が学位を取り易いのですが、論文として発表できる内容か否か (機密性だけでなく学術的に価値のある仕事か否か) にも左右されます。アカデミアに戻りたいと少しでも考えているのであれば、修士課程を出てとりあえず民間企業に就職して、社会人入学しようという考えはまったくお勧めできません。企業にいると、どうしても論文発表数が少なくなり、社会人入学で学位取得したにせよ、同年代の人と比べて業績的に見劣りします。アカデミアでの採用、特に若手の場合は論文発表件数が極めて大きな意味を持ちますので、圧倒的に不利になります。また、民間企業に就職することで学会に行く機会も減れば、アカデミアでの人脈も途絶えがちになります。」

Q . 論文博士」って何ですか
A . 博士課程を修了せず、研究業績の審査によって博士号を取得する制度です。大学に通わないので授業料が不要ですが、そのぶん研究指導は得られず、そのうえで博士課程の学生以上の研究業績が求められることが多く、事前相談や資格審査、論文提出資格など、大学ごとの要件を満たす必要があります。

金銭支援制度について

Q . 博士学生が利用できる金銭支援制度にはどのようなものがありますか?
A . 主要な金銭支援制度をこちらのPDFファイルにまとめました。また、支援金・奨励金比較表もご覧ください。このように、博士学生に生活費を給与や雑所得として支給する制度や、研究費を支給する制度が複数あります。また、新潟大学が行っている進学支援金や、日本学生支援機構 (JASSO) の第一種奨学金 (無利子貸与型) もあります。
民間財団の研究助成や奨学金に関しては、専攻や研究分野によって利用できるものが異なりますので、指導教員や先輩に聞いてみることをおすすめします。また、併用不可の制度もありますので、要項をよくご確認ください (日本学術振興会特別研究員DC (学振DC) と新潟大学博士課程奨学金、科学技術振興機構 (JST) の次世代事業と新潟大学博士課程奨学金、など。また、給与や雑所得をもらえる制度同士は基本的に併用不可)。
また、金銭支援制度ではありませんが、高い研究成果をおさめることで所定の年限よりも早く学位をいただく「早期修了制度」というものがあります。修士課程、博士課程それぞれにおいて、所属によって要件が異なりますので、挑戦する場合は指導教員や職員に確認してみてください。

Q . 上記の回答に関連して、給与と雑所得の違いは何ですか?
A . 給与をもらえる制度である日本学術振興会特別研究員DC1, DC2は、研究員として雇用される形態ですので、職歴になります。私たち教育研究高度化センターも特任助手 (教員) として給与をいただいており、職歴になります。また、大学の特任助教や特任助手の場合は雇用保険に加入することができ、大学によって源泉徴収・年末調整していただいています。
科学技術振興機構 (JST) の次世代事業は職歴ではなく、生活費が雑所得として支給されます。また、自分で国民健康保険に加入手続きする必要があり、自分で確定申告して所得税・住民税をおさめる必要があります。

Q . 金銭支援制度に採択されるために、どのようなことを準備すべきですか?
A . まずは、自分が申請できる制度の提出書類、選考過程、締切日を調べましょう。多くの制度は「研究内容 (研究背景・これまでの研究結果・今後の研究計画・社会に期待される効果 など)」の記載を必須としているので、卒研発表や学会発表での内容をもとにして研究室外の人にもわかりやすいよう文章化してみましょう。
そして、「これまでの研究業績」も非常に重要です。具体的には、学会発表、受賞、論文掲載、特許などです。学部生や修士学生のうちからチャレンジしやすいのは、学会発表と、そこでの発表賞受賞です。博士進学の気持ちが固まってきたら、指導教員に相談し、学会参加や論文投稿の実績づくりに挑戦することも、研究者としてのステップアップとしてとても重要だと思います。
特に学振DCは、対象分野が広く、全国の大学院生が応募するうえ、簡潔にわかりやすくまとめるハードルが高い印象があります。特任助手の私は、修士1年の3月にDC1を書き始めたとき、先輩から前年度に提出した申請書を見せてもらったり、指導教員に科研費申請書を見せてもらったりして参考にしました。現在は、提携機関であるPhDリクルート室が「学振採択申請書WEBライブラリー」を提供していますので、ぜひチェックしてみてください。また、申請時期には本学の院生会や他大学の組織が「学振申請書の書き方セミナー」を開催していることがあります。

Q . 学振DCやJST次世代に採択されても、授業料は免除されますか?
A . これまで学振DCやJST次世代、特任助手に採択された先輩方は、次の要件を満たしていれば多くが全額免除されました。要件は、① 独立生計維持者として、② 大学が指定する家計基準を満たすこと です。①の独立生計維持者とは、簡潔に言うと「父母等から扶養されておらず、父母等と別居している、本人または配偶者の年収が150万円以上の者」です。本学では、別居であっても配偶者がいると、配偶者の年収も考慮されてしまうため、注意が必要です。
詳しい基準や申請に必要な書類については、学務情報システムから年度・学期ごとの「授業料免除・徴収猶予申請要項」をダウンロードし、ご確認ください。また、授業料免除のための予算には限りがあるため、今まで全額免除されていた条件でも、半額免除になる可能性もあるとのことです。

博士号取得後の進路について

Q . 博士号取得後の進路にはどのようなものがありますか?
A . 本学の先輩たちは、大学、高等専門学校、研究所、民間企業などに就職しています。いわゆるアカデミアと呼ばれる教育機関や公的機関では、大学の博士研究員や助教、高等専門学校の助教、研究所の研究員として雇用されています。それだけでなく、幅広い分野の民間企業において研究者や技術者となった方もおり、多様な立場で高度技術者として活躍しています。
円グラフは、令和7年度の卒業生の進路先です。

Q . 博士号を取得して民間企業に行くことは狭き門ですか?
A . 実際に民間企業の内定をいただいた私や友人の体験談としては、そんなことはないと感じました。博士学生の専門性の高さや、研究を進めるうえでの困難を突破してきた経験、論理的思考力が高く評価されていると感じます。大学での研究内容と企業で行う内容が100%合致することは稀ですが、博士学生の研究突破力・研究推進力に期待し、採用したいと思う企業は多いようです。就活イベントでも、博士採用やキャリア採用を増やす流れにある企業が多いと感じています。「博士号」が不利になることはなく、あくまで自分が研究を通して得た経験や知恵、それをもとにやりたいことがその企業の理念・目標とマッチしているか?ということが大切だと思います。

特任助手からのメッセージ

牧野先生
学部時代には、自分が博士号取得をめざすことになるとは思っていませんでした。ですが、面白いと思う学びに触れることや、好奇心に従って調べたり行動したりすることは好きでした。この「学びたい!」という気持ちを大切にここまで成長できたのは、指導教員や、博士学生の先輩・仲間たちのおかげだと思います。
「博士号」は非常に大きな壁に感じると思いますが、私たちは無限の可能性をもち、これからも一歩ずつ成長していける存在です。まずは達成できそうな目標から少しずつ挑戦を重ねることで、きっとこれまで見たことのない景色に出会えると思います。

悩んだときは、遠慮なく博士学生や教員を頼ってください。誰しも苦労や悩みを乗り越えた経験があるので、きっと力になってくださいます

藤野先生
私は博士3年ですが、正直、今でも自分が研究に向いているのかは分かりません。それでもここまで続けてこられたのは、指導教員や同じ博士課程の仲間、研究室の後輩など、周りで支えてくれる人たちがいたからです。
だから、「研究に向いているかどうか」はもちろん大切ですが、「自分が研究に向ける環境をつくること」も同じくらい大切なのかなと思っています。迷ったときは、一人で抱え込まずに、先生や先輩、同期、家族など、周りの人に頼ってみてください。
進学するかどうかに正解はありません。でも、しっかり悩んで、自分の意思で決めた選択なら、それだけで大正解だと思います。

高木先生
博士後期課程への進学は、不安を感じるのは当然ですが、「なんとなく不安」という気持ちだけで諦めてしまうのはもったいないと思います。まずは、経済的支援制度やキャリアパス、研究内容などについて情報収集し、実際に博士課程の学生や教員の話を聞いてみてください。不安の多くは、正しい情報を知ることで解消できることがあります
情報を集めた上で、自分が何をやりたいのか、どのような将来を目指したいのかを考え、自分自身が納得できる進路を選んでください。進学することが正解でも、就職することが正解でもありません。自分で考え、納得して選んだ道が、きっと自分にとっての正解になると思います