大学院の教育において重要なことは,深い専門知識と同時に幅広い視野を習得することです。このため新潟大学大学院自然科学研究科(以下,自然科学研究科)では,数理物質科学専攻,材料生産システム専攻,電気情報工学専攻,生命食料科学専攻,環境科学専攻の5専攻により,幅広い学問分野の先端的研究に基づく教育を展開しています。そして大学院教育研究の高度化を目指し,自然科学研究科附属教育研究高度化センター(以下,高度化センター)を設置しています。高度化センターでは,急速に変わっていく社会に対応するため,(1) 教育プログラム企画・検証・改善部門,(2) 国際化推進部門,(3) 実践型教育研究部門を置き,学内外の関係組織と連携しながら大学院教育研究の高度化を推進していきます。

社会は必然的に変化していきますが,なにかのきっかけでそれまでに蓄積された変化へのエネルギーが一気に放出されることも考えられます。1700年代に始まった産業革命では農業文明社会から工業文明社会へと社会構造が変化しています。そして今,情報通信技術の急速な発展に後押しされた情報化社会を経て,持続可能な発展(SDGs)や人工知能(A I)などのキーワードに代表される新しい時代へ向けて変化が進んでいます。自然科学においては,ダイナミックでグローバルな連携が求められ,一つの地域・分野に留まってはおられないのが現状です。これまでのように単なる専門性や技術力だけではなく,研究成果の社会への還元が強く意識されるようになり,持続可能社会への貢献も重要となっています。

このような時代において最先端の産業や学術研究分野で専門家として活躍し,新しい時代を創り出していくためには,学部の4年間で専門知識を学ぶだけでは十分ではありません。大学院で専門性を高めるととともに関連分野も広く学び科学的な視点から俯瞰的にものごと捉えていく能力を身につけることがますます重要となっています。自然科学研究科は,理学・工学・農学の幅広い学問分野を幅広くカバーしつつ学際的な研究を推進していますが,学部生の約5割が本研究科へ進学しております。高度化センターは学部も含めて関係する組織との連携を図り,成長を実感できるダイナミックな教育研究を実現していきたいと思います。皆様の温かいご支援とご協力をお願いいたします。

松尾 正之