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3.加減算の精度
3.1.
 
容量 100 mL のメスシリンダに 9.9 mL の水が入っている。ここに 0.001 mL の水を加えたときの体積を求めよ。
 
解説
 
何も考えなければ
 
\(\quad 9.9\ \rm{mL} + 0.001\ \rm{mL} = 9.901\ \rm{mL}\)
 
となるが,これでよいのだろうか?
 
9.9 mL は 9.85~9.95 mL の呼称であり,0.1 mL の幅がある。そこに 0.001 mL(= 0.0005~0.0015 mL)を加えると,9.8505~9.9515 mL と幅(の可能性)が 0.101 mL に広がる。
しかし,1 の位は信頼でき,小数第 1 位には不確かさがあり,小数第 2 位以下には信頼性はない。これは 0.001 mL を加える前と変わりはない。
 
したがって,上式は
 
\(\quad 9.9\ \rm{mL} + 0.001\ \rm{mL} = 9.9\ \rm{mL}\)
 
と表すべきである。
 
実験してみたら,その変化を知覚できないことは容易に想像できるだろう。電卓に表示された 9.901 をそのまま書くのはまったくの間違いである。
 
ここで,
 
\(\quad 9.9\ \rm{mL} + 0.001\ \rm{mL} \fallingdotseq 9.9\ \rm{mL}\)
 
のように「≒」を使用したくなるかもしれない。
厳密にしているつもりか,0.001 の寄与を無視することに後ろめたさを感じるのか,自信がないからか,いずれにせよそれは明かな間違いである。
「≒」は近似値を示すために使う記号であるが,9.9 mL という答は近似値ではない。これらの数値は数直線上の1点を表すのではなく,数値の範囲の呼称なのであるから「=」を使うのが正しい。
 
測定値を扱うときのこの考え方は,代数学とは違うものとして割り切らなければならない。
 
3.2.
 
86.2 g の水に 137.2491 g の水を加えたときの質量を求めよ。
 
解説
 
電卓で計算すれば
 
\(\quad 86.2 + 137.2491 = 223.4491\)
 
と表示されるが,答が 223.4491 g ではないことは,もはや理解できるだろう。
 
86.2 g は 86.15~86.25 g の呼称であり,86.2±0.05 g と表せる。
137.2491 g は 137.24905~137.24915 g の呼称であり,137.2491±0.00005 g と表せる。
これらを足すと,223.4491±0.05005 g = 223.39905~223.49915 g である。
1 の位は信頼でき,小数第 1 位には不確かさがあり,小数第 2 位以下には信頼性はない。これは 86.2 g の精度と変わりはない。
 
したがって
 
\(\quad 86.2\ \rm{g} + 137.2491\ \rm{g} = 223.4\ \rm{g}\)
 
となる。
 
加算によって全桁数が増えていることに注意せよ。
 
86.2 の最小桁は小数第1位,137.2491 の最小桁は小数第4位である。和の精度は最も大きい最小桁である小数第1位の方に決められる。
 
3.3.
 
小麦粉 44.20 g から 38.2 g を抜き取った。残りの質量を求めよ。
 
解説
 
電卓で計算すれば
 
\(\quad 44.20 - 38.2 = 6\)
 
と表示されるが,答が 6 g ではないことは,もはや理解できるだろう。
 
44.20 の最小桁は小数第 2 位,38.2 の最小桁は小数第 1 位である。答は最も大きい最小桁である小数第 1 位の方に決められる。
 
したがって
 
\(\quad 44.20\ \rm{g} - 38.2\ \rm{g} = 6.0\ \rm{g}\)
 
となる。
 
ここで,減算によって全桁数が減っていることに注意せよ。このことを桁落ちという。
 
 
結論
 
計算の精度は使った数値の精度の悪い方に制限される。加減算では最小桁が規定される。
 
すべての計算を一気に行うと,有効桁の増減に気がつかない。加減算を含む計算は,その前後でステップ・バイ・ステップで進めるべきである。
 
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3.加減算の精度